赤い鯨と白い蛇

Story 物語

雨見保江(香川京子)は、千倉に住む息子夫婦のもとに身を寄せることになった。孫の明美(宮地真緒)を伴って千倉に向かう途中で「どうしても昔住んでいた家を見に行きたい…」と、館山駅で途中下車する。その家は茅葺き屋根の古い民家だった。保江らが家の中へ入って行くと、家の持ち主・光子(浅田美代子)が姿を見せ、この家を取り壊して建て直すために、昨日よそへ引っ越したばかりだと話す。


保江の家族は、戦争中この家に疎開していた。終戦後も何年かそこで暮らしたので、保江にとっては青春の思い出が詰まった家だった。母屋、蔵、離れもある。庭の一隅には水神様を祀った小さな社も残っていた。
そこへ光子の娘・里香(坂野真理)が学校から帰ってきた。光子の夫は、3年前に黙って家を出て行方がわからない。里香は、父の思い出の詰まったこの古い家が大好きらしい。保江は懐かしい家を見せてもらったあと、千倉に向かおうと促す明美に、「できれば今日はここに泊まりたい…」と言い出す。明美が困るなか、光子はイヤな顔も見せずに「よろしければ何日でも」と承諾してくれた。

年を重ね、次第に記憶が心もとなくなった保江は、「遠い昔の大切な約束を確かめるためにここに来た」と明美に打ち明ける。


ふと外に目をやると、見知らぬ女性が家を覗いていた。彼女は、サプリメント食品のセールスをしている美土里(樹木希林)。以前、この家を借りていたことがあり、光子から取り壊すと聞いて仕事のついでに訪ねてみたのだと言う。だが、光子はその話に釈然としない。

ずけずけした物言いの美土里と遠慮のない現代っ子の明美がやり合いながらも、女性たちはいつしか古い知り合いのように打ち解けはじめていた。保江が唐突に「この家には150歳になる白い蛇が住んでいて、その蛇と話をすると幸せになれる」と言い出す。そんな保江に美土里は呆れるが、里香が「私、見たことある。白い蛇を…」と言って、皆を驚かせる。

記憶を辿るように白い蛇を探す保江の脳裏に、少しずついろいろなことが思い出されていった。そして、「青いお月様の夜、水神様の前に立っていたら白い大きな蛇が目の前にいて、足がすくんで動けなかった。そのとき、『自分に正直に…』という声が聞こえたのだ」と話す。その記憶は、保江の心に深く刻まれた、青春時代のある出来事に深く関わりがあるのだった…。


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